歌舞伎の演出は数多くあります。
新作歌舞伎の記者発表等で、古典歌舞伎の演出を使って、生の舞台の良さを表現したいと歌舞伎役者さんは答えますが、古典歌舞伎の演出って言われても・・・そもそも歌舞伎も初めて見るんだけどと、戸惑います。
ほんの一部になりますが、わかりやすい歌舞伎の演出をお伝えします。
少しでも歌舞伎の観劇に役に立つと幸いです。
歌舞伎の演出
実はとてもわかりやすく表現されている演出が多いです。
たとえば、有名なところでは隈取りです。
隈取り
言わずと知れた顔の目のふちに書かれている線のことです。
赤はいい人、青は悪い人、茶は妖怪です。
茶色の線の人がいたら、それは人ではない何者かなのです。
人ではない何者かが登場する場所、それは花道の七三にあるすっぽんと呼ばれる穴からです。
花道のすっぽんからせりあがって登場した時は、人ではない物、例えば妖怪やおばけ、動物の化身です。話が進む中で、あぁ、だからすっぽんから出てきたんだとわかり、面白いです。
見得を切る
話の盛り上がり、見せ場で役者が止まって決めポーズをします。
止まることで観客の注目を集めることができます。
拍手するタイミング、見どころがわかりやすいですね。
この時に大向こうがかかります。例えば役者屋号の「音羽屋「高砂屋」や、「待ってました」「〇代目」などがあります。
大向こうはタイミングによっては場をしらけさせてしまうこともあり、大変難しいです。
歌舞伎を多く見たことのあるの方々で構成された大向こうの会があり、その方々で声をかけています。
だんまり
設定は、夜の明かり一つない暗闇です。舞台上は薄暗くなります。
宝を奪う時や、殺しの場面などがあり、暗闇のため、手探り状態で動きます。
例えば、宝を奪う場面
ゆっくり、ゆっくり動きます。すれ違う人に当たったり、当たらなかったりしながら、宝が次々と違う人へと動いていきます。
宝をとったタイミングで見得を切ります。ゆっくり動き、セリフはありません。
無言で行うことから、黙り→だんまりとなったようです。
立ち廻り・殺陣
斬り合う場面での演出です。
主の役者と多くの敵が戦う場合、主の役者がひょいひょいと軽く動作をするだけで、多くの敵が倒れます。
敵は倒れて足を上げていたり、とんぼ返りをしたり、袖にはけたりします。
この時のつけうちの音が効果的です。
六方
足を力強く踏みながら、手を六方向(天地東西南北)に振りながら進みます。
右手と右足を出してすすみます。花道をとって引っ込んでいきます。
意外に思われるかもしれませんが、演目によっては、時事ネタが盛り込まれることがあります。
早替り
一人の役者が役を2つ以上つとめる時に、瞬時に違う役に替わって舞台に登場します。
役が男と女という場合もあり、衣装はもちろん、雰囲気もガラッとかわるので驚きです。
早替りの演目は、お染七役、四谷怪談などあり、演目に、早替り勤め申し候の表現が使われていることがあります。
引き抜き
衣装に仕込まれた糸を引き抜いて、衣装替えをします。
女形の方が踊っている時に、後見と呼ばれる役者を手助けする方が、衣装に仕込まれていた糸を抜き、今まで来ていた着物をさっとまとめて引き上げます。
踊り手と後見の連携が素晴らしいです。
ぶっかえり
本性をあらわす時の演出です。
衣装に仕込まれていた糸を後見が抜いて、上半身の衣装を下に垂らし、見得を切ります。
それまでの印象とは全く違った衣装に替わり、役の雰囲気もガラっと変わります。
大人しい感じだったのが荒々しくなるそんなイメージです。
もどり
悪人だと思っていた人が、びっくりするような善い行いをし、実は善人だったということをいいます。
隠していた本性、本心にもどることからもどりと言います。
舞台上では、その人が死ぬ間際にその人の口から事の顛末が語られます。
義経千本桜のすし屋の権太が代表的です。
鐘の音で夜になったことがわかります
ゴーンと鐘が鳴ると、夕方から夜になっていきます。舞台上では行燈に火がともされたりします。
夜になったんだなというのを音と視覚から感じることができます。
音で演出されることもあり、しゃんしゃんと鈴の音が鳴ると馬が登場するとわかります。
まとめ
歌舞伎の演出の一部を紹介しました。歌舞伎を観はじめて、これは何?と思った演出をまとめてみました。
その他にも、舞台や音楽も歌舞伎特有なものが沢山ありますので、楽しんでくださいね。
歌舞伎を初めて観るという方のお役に立てればいいなと思います。
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